たると

バイク等の日記

成仏!

僕が若かった頃
家ではいつも兄にどつきまわされ。
今で言うDVだね。
顔は腫れ上がり、紫色に。毎日毎日繰り返し。
鼻の骨が折れ、またあばら骨も!

そんな日々の生活を送っていました。
掃除から食事まで僕がやってました。
上手く料理が出来なくては殴られ、理由がなくても殴られて。

そんな日々が、嫌になり摩耶埠頭にいつも行って海を眺めていました。
遠くを見つめては、ため息。
外国の大きな船が入っていると、勝手に乗り込み何処か遠くへ行ってしまいたいと。

朝行くときも、昼間にも。
夕方や、また深夜にも。
黄色いバイクに乗って。当時ヘルメットは要らなかったので風を感じます。(ヤマハのトレール)

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そんなある日
天気はあまり良くなくて
どんよりした空
しかも、風もなく
海面も波が立たず動きもない。
初夏だったので、生温い空気。
船の灯りもまばらで月もなく、とても寂しい海でした。
そして変わらないあの波止場独特の匂いが漂っています。
潮風と海草と重油と錆びの匂いです。

ただ堤防を撫でる波の音が寂しく歌っていました。

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ロープをかける、波止場独特の出っ張りに座り沖の見えない海を眺めていました。
その時
何か……
人の気配が感じて振り返ると
悲しい顔をした女性が、後に立っていました。
20才位かな
白と青のチェックのワンピースに白いサンダルを着てて、でも濡れていました。

何も話さず、ただ立って僕の方を向いています。

僕もきっと同じ表情だったのだろうね。

互いに何も話さず見つめ合っています。

風が出てきて、少し肌寒く感じてきたので帰ろうっとすると。
小さな声で
待って…
と囁きかけてきました。
僕の聞き間違いか、波の音?
バイクの方に向かう。
ふと振り返ると後に立っていました。
また
声が聞こえました。

行かないで…

僕は心配になり、どうしたの?と声をかけます。

家は近所?
だったら送って行くよって言うと首を傾げ黙っていました。
そんなかっこだと風邪ひくから僕の家においでとバイクの後に乗せて帰りました。

家には誰も居ません。
いつもです。
僕の部屋に連れて入りお風呂を沸かします。
沸いたから、入ってと言い脱いだ服は洗濯機に入れて洗いました。
風呂の扉を少し開けてバスタオルを渡し部屋に。
僕のTシャツを出して着て貰いました。
パンツは、女物ないので僕のビキニパンツを渡しました。
ゆっくりしててっとベッドに座らせて、僕は彼女のワンピースにアイロンをかけ乾かします。
下着は部屋の窓に吊るしてドライヤーの風で乾かします。

砂糖たっぷりの温かいミルクティーを入れ彼女に渡しました。
何か食べる?お腹空いてない?
……
台所で何か作らないと何にもないわ。
白い御飯の上に炒り卵と鳥のミンチを甘辛くしたそぼろをまぶし味付け海苔を細かく散りばめて彼女に持って行きます。
二つ作って一緒に食べたかったからね。
いつも一人で食べてるから。
お茶じゃなく氷水も(いつも水で食べてるから)

ありがとう…

僕は何も聞きません。

食べ終わり。
疲れてるみたいだし、そのままそこで寝てて良いよって言いました。
家には連絡する?
ううん、誰もいないからっと。
じゃ寝転んでて、ゆっくりしててね。
レコードをかけて電気も暗くしました。
僕は片付けをすまし、ワンピースにハンガーを付けて窓にぶら下げて
椅子に座り彼女を見つめています。

明日は日曜日だから
まあ、いいか!

もう深夜2時を回っていました。
僕も寝よう、彼女に横に入っても良いって聞いてベッドに並びました。

彼女の顔は寂しいそうでした。
何かあったの?
何で波止場に…
しかも濡れて
あっ質問ばかりだね、ごめんね。
名前だけでも教えてくれる?

由美子
ゆみこです。

そうなんだ僕はゆうじです。

さあ、寝よう明日何処か行くとこあるの?
なかったらゆっくりとしていいよ。
じゃ、おやすみなさい。




続く